ユネスコエコパーク/ラムサール条約湿地/重要生息地/重要湿地500
○祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク・・・H29(2017)
○ラムサール条約湿地潜在候補地・・・・・H22(2010)
○宮崎県の重要生息地・・・・・・・・・・H20(2008)
○日本の重要湿地500・・・・・・・・・H13(2001)
【家田湿原 山んはな橋の上流】
【特徴】
北川湿原は、宮崎県延岡市北川町の「家田地区」と「川坂地区」に広がる約20haの湿地です。家田湿原(18ha)と川坂湿原(2ha)を総称して「北川湿原」と呼んでいます。東九州自動車道北川IC(道の駅北川はゆま)から車で北東へ5分の距離に位置し、絶滅危惧種の動植物が50種以上生息。「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク(移行地域)」「ラムサール条約湿地潜在候補地」、「宮崎県の重要生息地」、「日本の重要湿地500」に指定された学術的に極めて価値の高い湿原です。
ここは、里地・里山に囲まれた水辺環境であることが特筆すべきポイント。高速道路・県道・市道が湿原のすぐ脇を通り、周辺には民家が建ち並んでいます。家田川と川坂川は、農業用水・排水として利用され、稲作などが現在も営々と行われています。こうした環境の中で希少動植物が絶えることなく今日まで残っているのは、見方を変えれば、人の営みが湿原を守ってきとも考えられます。地元に100年以上続く「溝さらえ」と呼ぶ共同作業は、湿原に軽度の攪乱をもたらし、種の保全に大きな役割を果たしているのではないでしょうか。
湿原を代表するものは、「コウホネ」と呼ばれるスイレン科の植物。家田川と川坂川に多く生育し、とある研究者によるとその規模は日本一とのこと。葉っぱはスイレンに似ていて、水上に伸びた細長い茎に黄色い花が付き、5月から11月まで観賞できます。
ここは、タデ科の植物が広く分布しているのも特徴です。絶滅危惧種の「サデクサ」や「ナガバノウナギツカミ」などもその一種。群落を形成していて、10月には湿原をピンク色に染め上げます。「キタガワヒルムシロ」や「キタガワユウガギク」と呼ばれる固有の植物もあり、四季を通して多種多様な草花で楽しむことができます。
また、北川湿原は、トンボの楽園とも言われています。40種を超えるトンボが確認されていて、そのうち13種は絶滅危惧種。特にイトトンボの仲間が多く生息し、代表的なものはグンバイトンボ。雄の中足と後足の4本に、白い葉っぱのようなものが付いているのが特徴です。それが、相撲の行司さんが持つ「軍配」に似ていることから「グンバイトンボ」の名前が付けられました。3~4㎝の小さなトンボで、5月から7月にかけて見られます。
トンボ以外にも、メダカ、ドジョウ、ナマズ、ゲンゴロウ、アメンボ、イシガメなど、絶滅危惧種に指定された魚や水生生物を日常的に観察することができます。北川湿原は、驚きと感動の水辺です。
【歴史をひも解く】
ここは昭和30年代初めまで、稲作が盛んに行われていました。しかし、ぬかるんだ田んぼは農作業が困難を極め、機械化も進まず、その後、減反政策とともに耕作放棄が進んでいきます。昭和50年代にはマコモやオギが生い茂る荒涼とした原野が広がるように。
【休耕田が湿原へ 1979年(S54)頃】
実は、その原野がとんでもない貴重な湿原になっていたとは驚きです。研究者がその存在を見いだしたのが、平成元年のことでした。しばらくは、手つかずの状態でひっそりと見守られていましたが、一方では、原野と化した休耕田に工業団地の計画が持ち上がり、一部は埋め立てへと。開発か?保護か?・・紆余曲折を経て、平成14年に「湿地保全」の方針が決まり、広く「家田・川坂湿原」として認知されるようになりました。
「ラムサール条約湿地潜在候補地」に指定されるのと、時を同じくして平成22年には、家田湿原に「家田の自然を守る会」、川坂湿原に「川坂川を守る会」が設立。「北川湿原」という新たな名称を用いてPRに努め、観察会、ウオーキング大会を開催するなど、精力的な活動を展開しています。
湿原を訪れる観光客は年々増加中です。平成27年には、東九州自動道路の宮崎~北九州間が開通。さらに、平成29年6月には、「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク」の移行地域に指定されました。地元では、湿原の保全に努めながら地域の宝を活かし、まちを元気にしていきたいと頑張っています。
○植物
オグラコウホネ/サイコクヒメコウホネ/ナガバノウナギツカミ/サデクサ/サイコクヌカボ/
ヌカボタデ/タコノアシ/ゴキヅル/ヒメミソハギ/ミズマツバ/ヌマゼリ/ヤナギイボタ/
ミズネコノオ/ミズトラノオ/ミゾコウジュ/イヌゴマ/マルバノサワトウガラシ/スズメノハコベ/
ミズオオバコ/セキショウモ/キタガワヒルムシロ/ミズタカモジ/マイヅルテンナンショウ/
ヤマトミクリ/ナガエミクリ/ウマスゲ/オニナルコスゲ/セイタカハリイ/マツカサススキ/
タイワンヤマイ/ハタベカンガレイ/ヒメシロアサザ など
【サイコクヒメコウホネ】 【ナガバノウナギツカミ】 【ゴキヅル】
○魚類・昆虫など
コオイムシ/クロゲンゴロウ/コガタノゲンゴロウ/ヒメケシゲンゴロウ/コミズスマシ/
モノアラガイ/マツカサガイ/ドジョウ/ナマズ/メダカ/トノサマガエル/クサガメ/
イシガメ/アメンボ/ニッポンバラタナゴ など
【ドジョウ】 【イシガメ】
○トンボの楽園
- 北川湿原では40種を超えるトンボが確認され、そのうち13種は絶滅危惧種です。
アオイトトンボ/アオハダトンボ/アオモンイトトンボ/アキアカネ/アサヒナカワトンボ
アジアイトトンボ/ウスバキトンボ/オオシオカラトンボ/オグマサナエ/オニヤンマ/
カトリヤンマ/キイトトンボ/キイロサナエ/キトンボ/ギンヤンマ/クロイトトンボ/
グンバイトンボ/コオニヤンマ/コシアキトンボ/コシボソヤンマ/コヤマトンボ/
サラサヤンマ/シオカラトンボ/シオヤトンボ/ショウジョウトンボ/タカネトンボ/
タベサナエ/チョウトンボ/トラフトンボ/ナツアカネ/ネアカヨシヤンマ/ノシメトンボ
ハグロトンボ/ハネビロエゾトンボ/ハラビロトンボ/ベニトンボ/ホソミオツネントンボ
マイコアカネ/マユタテアカネ/ミヤマアカネ/ムカシトンボ/モートンイトトンボ/
モノサシトンボ/ヨツボシトンボ/リスアカネ など
【ハグロトンボ】 【ハラビロトンボ】 【ミヤマアカネ】